米国株の配当、いくら取り戻せますか?
計算式を先に全部出します。あとから確かめられないものは、確かめられるうちに出しておくためです。
このツールは生成AIを使っていません。画面に出る金額は、あなたが入力した数字と、 下に並べた税率・控除の表を四則演算しただけのものです。外部のAPIも呼びません。 計算エンジン v1.0.0 / 収録している制度 令和7年分(2025年分)以降 / 国税庁の公表資料との突き合わせ 2026-08-14。
1. 二重課税の実際の負担は30.315%ではありません
米国株の配当が実際にどう課税されているか。ここを勘違いしたまま計算すると、以降が全部ずれます。
配当100 → 米国で10%源泉徴収されて90 → その90に日本の20.315%(=18.28)がかかる → 手取り約71.72。
つまり合計負担は 約28.28%で、 「10% + 20.315% = 30.315%」ではありません。日本の税は、米国の税を引いたあとの金額にかかるためです。
そして確定申告するときは、配当所得の金額は米国で引かれる前のグロスで申告します。課税される金額はいったん増えますが、その増えた分の外国所得税を 外国税額控除で取り戻す、という順序になります。
2. 外国税額控除の控除限度額
国税庁 No.1240 居住者に係る外国税額控除。ここが本ツールの本体です。
「その年分の所得税額」は、配当控除などの税額控除を引いたあと、外国税額控除と 復興特別所得税を適用する前の金額です。 「調整国外所得金額」は国外から生じた所得(このツールでは外国株の配当)で、所得総額を超える場合は所得総額が上限です。
この上限があるので、国外所得が全体に占める割合が小さいほど、また所得税額が小さいほど、 取り戻せる額は小さくなります。「申告すれば米国の10%が必ず全額戻る」わけではないのは、この式のためです。
- 所得税 — 上の式の限度額まで
- 復興特別所得税 — 復興特別所得税額(= 基準所得税額 × 2.1%)× 同じ比率 まで
- 道府県民税 — 所得税の控除限度額 × 12%(政令指定都市は 6%)
- 市町村民税 — 所得税の控除限度額 × 18%(政令指定都市は 24%)
道府県民税と市町村民税を足すと、政令指定都市かどうかにかかわらず所得税の控除限度額の30%です。 つまり指定都市かどうかは、控除できる総額を変えません。 内訳の表示だけが変わります。
ここまでで控除しきれなかった額を控除限度超過額、 使い切らなかった枠を控除余裕額と呼び、どちらも3年間繰り越せます。今年の超過額は過去3年の余裕額で、 過去の超過額は今年の余裕額で控除できます。
3. 3つの課税方式で何が変わるか
配当をどう申告するかで、税額も、合計所得金額に入るかどうかも変わります。
| 申告不要 | 申告分離課税 | 総合課税 | |
|---|---|---|---|
| 税率 | 20.315%(源泉) | 20.315% | 累進5〜45% + 住民税10% |
| 外国税額控除 | 使えない | 使える | 使える |
| 譲渡損失との通算 | できない | できる | できない |
| 配当控除(国内株) | 使えない | 使えない | 使える |
| 配当控除(外国株) | 使えない | 使えない | 使えない |
| 合計所得金額に入るか | 入らない | 入る | 入る |
| 配偶者控除への影響 | なし | あり | あり |
外国株の配当に配当控除は使えません。 配当控除は日本の法人から受ける配当が対象で、外国法人からの配当・投資法人(J-REIT)からの分配金は対象外です (国税庁 No.1250)。「総合課税にすれば配当控除で有利」という説明をよく見ますが、それは国内株の話です。 外国株だけを持っている方が総合課税を選ぶと、累進税率がそのまま乗ってきます。
令和5年分から、所得税と住民税で違う課税方式を選ぶことはできません。本ツールも所得税と住民税で 同じ方式を選んだものとして計算しています。
総合課税を選ぶと、その年の配当と譲渡損失を通算できません(譲渡損失そのものを3年繰り越す申告は別途できます)。申告不要を選ぶと、通算も繰越もできません。
4. なぜ「還付額」ではなく「申告不要との差」を出しているか
還付額ではなく、税負担の差で比べる理由。
外国税額控除の金額だけを大きく出すと、それを見た人は「申告すればこれだけ戻る」と読みます。 ところが配当を申告すると合計所得金額が増え、900万円 / 950万円 / 1,000万円 の段階で 配偶者控除・配偶者特別控除が減ります。減った分は増税です。 外国税額控除で戻る額より増税のほうが大きい人は、申告しないほうが手取りが多くなります。
そのため本ツールが表に出すのは、いつでも「確定申告しなかった場合と比べて、年間の税負担がいくら変わるか」です。控除の金額はその内訳として出しています。
住民税の税額そのものは出していません。 住民税の課税所得は、所得控除の額が所得税と違うため、源泉徴収票からは分かりません。 分からない数字を推定して出すより、出さないほうが正確です。 ただし住民税の所得割は一律10%なので、方式を変えたときの「差」だけはベースを知らなくても正確に出せます。 だから差だけを出しています。
5. 収録している税率と控除の表
このツールが持っている数字は、これで全部です。
| 195万円以下 | 税率 5% / 控除額 0円 |
| 195万円超 330万円以下 | 税率 10% / 控除額 97,500円 |
| 330万円超 695万円以下 | 税率 20% / 控除額 427,500円 |
| 695万円超 900万円以下 | 税率 23% / 控除額 636,000円 |
| 900万円超 1,800万円以下 | 税率 33% / 控除額 1,536,000円 |
| 1,800万円超 4,000万円以下 | 税率 40% / 控除額 2,796,000円 |
| 4,000万円超 | 税率 45% / 控除額 4,796,000円 |
課税所得は1,000円未満を切り捨てて計算しています。復興特別所得税は、外国税額控除を適用する前の 所得税額(基準所得税額)に 2.1% を掛けたものです。
| 課税総所得金額等 1,000万円以下の部分 | 所得税 10% / 住民税 2.8% |
| 1,000万円を超える部分 | 所得税 5% / 住民税 1.4% |
| 本人の合計所得金額 900万円以下 | 一般 38万円 / 70歳以上 48万円 |
| 900万円超 950万円以下 | 一般 26万円 / 70歳以上 32万円 |
| 950万円超 1,000万円以下 | 一般 13万円 / 70歳以上 16万円 |
| 1,000万円超 | 0円 |
住民税の配偶者控除は 33万 / 22万 / 11万(70歳以上は 38万 / 26万 / 13万)です。
| 配偶者の合計所得金額 | 900万以下 | 〜950万 | 〜1,000万 |
|---|---|---|---|
| 58万円超 95万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
| 95万円超 100万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 |
| 100万円超 105万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 |
| 105万円超 110万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 |
| 110万円超 115万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 |
| 115万円超 120万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 |
| 120万円超 125万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 |
| 125万円超 130万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 |
| 130万円超 133万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
配偶者の合計所得金額が58万円以下なら配偶者控除、58万円超133万円以下なら配偶者特別控除です。 どちらの場合も、配偶者の所得が95万円以下なら控除額は同じ38万円になるため、 58万円という境目は控除額そのものには影響しません(70歳以上の加算があるときだけ効きます)。
6. 当ツールが置いた仮定
計算の途中で「決めなければいけないが、法令に一意の答えが書かれていない」ところ。当ツールが置いた仮定です。
申告分離課税で譲渡損失と配当を通算するとき、損失を国内配当と国外配当のどちらから先に引くかで、 調整国外所得金額が変わり、控除限度額も変わります。本ツールは配当額の比で按分して引いたものとして計算しています。 これは法令が一意に定めているわけではなく、当ツールが置いた仮定です。
実際の申告書では、控除余裕額を所得税・道府県民税・市町村民税の3つに分けて管理します。 本ツールは繰越を合計額で扱っています。今年控除できる総額は同じですが、 申告書に書く内訳は明細書の様式に従ってください。
住民税から控除できるのは、実際に納める住民税額までです。住民税の所得割は課税所得の10%あるので、 通常の所得水準では限度額(所得税の控除限度額の30%)に足ります。ここは差が出ないものとして扱っています。
7. このツールが持っていないもの
持っていない数字は、それらしく埋めずに「持っていない」と書いています。
この2つは直近でも改正されており、間違えると3方式すべての税額が同じ方向に狂います。しかも狂ったことに気づく手がかりが画面に出ません。源泉徴収票や確定申告書に、あなたの正しい数字がすでに印字されているので、それを転記していただくほうが確実です。
配当の円換算に使うレートは日付ごとに違い、自動取得に失敗しても画面にはそれらしい数字が並ぶだけです。証券会社の年間取引報告書には、すでに円換算後の金額と外国所得税額が円で書かれているので、そこから転記してください。
配当を申告すると住民税の所得に入るため、国保加入の方は保険料が上がることがあります。料率は自治体ごとに違い、全国共通の数字が存在しないので概算も置きません。会社員(健康保険)の方は影響を受けません。国保の方はお住まいの自治体でご確認ください。
調整控除は人的控除の差に応じた調整で、3方式のどれを選んでも大きくは動きません。均等割は方式では変わりません。どちらも比較の結論を変えないので扱っていません。
確定申告書のデータ形式は国税庁の公開仕様に厳密に従う必要があり、検算していない出力を配ると、そのまま提出されて誤申告になります。初版では計算結果と転記先の案内までにしています。
税額だけなら計算できますが、国保・扶養・各種給付の判定は本ツールが見ていない要素で決まります。出すのは税額の差だけで、選ぶのはご本人です。